こちらの記事では前編と後編に分かれており、こちらは後編です。
前編はこちらからお読みいただけます→藤井聡太JT杯覇者、絶妙手連発!決勝戦を解説(前編)【第44回将棋日本シリーズJTプロ公式戦】 – 将棋ニュース速報 (shogimatome.com)
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ハイライト解説(後編)⑤~⑭
前編では初手から55手目までのハイライト解説をしました。今回の後編では、56手目から終局までのハイライト解説をしていきます。持ち時間が短い将棋でしたが、長手数の対局の中で多くの絶妙手が放たれました。とても見応えのある一局です。
⑤61手目▲8七金 現代流、組み換え狙いの一手
以前は▲8七歩が一般的でしたが、最近は▲8七金が手厚い形と評価されて指されることが多くなりました。
⑥80手目△3五歩~82手目△4五飛 後手の反撃で形勢が互角
力強い一手です。後手の狙いとは。
▲同銀△4五飛と進行しました。
以下、先手は▲3五銀と金を取りました。△4六飛と角を取られてしまいましたがここで▲2一歩成。角と銀桂の2枚換えで先手の駒得になりました。
⑦86手目△3六飛 後手の狙いの切り返し
2枚換えで先手の駒得があり、後手は駒損になりましたが、この手が狙いの一手です。次に△3四飛と銀を取る手と△3八飛成の2つの狙いがあります。
⑧100手目△4五歩 敵の打ちたい所に打て
渋い一手です。一見狙いがなさそうですが、これは後に4五の地点に後手の駒の利きが無くなった時に、▲4五銀または▲4五金と打たれるのを防いだ手です。▲4五銀または▲4五金を打たれると、後手は入玉が困難になります。「敵の打ちたい所に打て」とはこのことです。
敵の打ちたいところに打て (てきのうちたいところにうて)
敵の打ちたいところにこちらから先に駒を打つことによって、相手の手段を消すことができるということ。敵にとっての要所は、自分にとっての要所でもある
将棋の格言 – Wikipedia
⑨101手目▲4八金 元会長佐藤康九段が唸る、堂々たる金打ち
▲4八金は次の▲3七香を狙いながら、△4八桂成に対して▲4七銀を狙った手です。
⑩111手目▲4六金 先手、反撃開始
先手は▲4六金と桂馬と金の交換に出ました。流れは後手にあると思われたこの局面で、先手は桂馬を手にしてここから反撃が始まります。
⑪113手目▲3三銀 銀のタダ捨て
先ほどの桂馬と金の交換はこれが狙いでした。派手な銀のタダ捨てです。△同龍には▲4五桂の王手龍取りがあります。
本譜はこの手に対して△4一龍と逃げましたが、先手の反撃は続きます。
⑫115手目▲5九飛~117手目▲4二銀 戦力不足解消の飛車切り
▲5九飛で質駒の銀を入手します。そして△同馬。
▲3二銀打と王手龍取りです。先手が飛車を手にすると、今後は王手角取りが見えます。
⑬121手目▲3九飛 詰めろ馬取り
飛車を手にした先手は、▲3九飛と後手玉の上部脱出を阻止しながら、詰めろ馬取りをかけました。後手玉は▲3三飛成△4五玉▲4四金までの詰めろです。
⑭145手目▲1七角 急所の一手
後手は入玉を狙っていましたが、秒読みの中、先手から急所の一手が放たれました。後手の持ち駒は歩しかないので、合駒が打てません。
後手は△2六桂と移動合いをしますが、以下▲同角△同金▲4六金。
入玉を防いであとは一手一手の寄りになります。ここで糸谷哲郎八段は投了、藤井聡太JT杯覇者が149手の熱戦を制しました。
藤井聡太JT杯覇者、年間勝率の記録更新か
藤井聡太JT杯覇者は本局に勝利し、暫定的に将棋史上最高の年度勝率を更新しました。現時点の将棋史上最高の年度勝率は、中原誠五段(現16世名人)が記録した0.855です。今年度末までこの記録を上回れば56年ぶりの記録更新、歴史的なビッグニュースです。
記録を更新するには、今年度の残りのタイトル戦である棋王戦と王将戦、どちらかでストレート防衛をしなければなりません。理由は4勝1敗は勝率8割であるため、年度勝率が下がってしまうからです。藤井聡太JT杯覇者には、タイトル防衛を超える成果を期待してしまいます。
藤井聡太JT杯覇者 2023年度成績30勝5敗(0.857)
中原誠五段(現16世名人) 1967年度成績47勝8敗(0.855)
現代将棋史上最高の年間勝率記録は1967年度に中原誠五段(現16世名人)が記録した0.855(47勝8敗)です。
タイトル保持者ながら史上最高勝率ペース! 藤井聡太三冠、今年度勝率は驚異の0.854!(松本博文) – エキスパート – Yahoo!ニュース
写真の引用先:中原誠(1)タイトル64期 – 日本経済新聞 (nikkei.com)
まとめ
短い持ち時間でしたが、149手の長い見応えのある一局でした。個人的にこの対局は、先手が後手の質駒を拾って勝ちに結びついた印象を持ちましたが、よくよく考えると先手の思惑通りに後手に駒を打たせたのであって、全て藤井聡太JT杯覇者の読み通りであったのではないかと考えました。実際はそうでなくても、我々にそうと思わせてしまう実力の持ち主です。今回、藤井聡太JT杯覇者が優勝を果たし、見事二連覇を達成しました。藤井聡太JT杯覇者が史上8人目のJT杯連覇達成とのことです。参加者が12名に絞られている中での連覇達成は素晴らしい業績です。
来年度も優勝した場合は史上2人目の3連覇となります。
今年度参加しているプロ公式戦で全て優勝を果たしている藤井聡太JT杯覇者は、恐ろしいことに21歳という若さ。どこまで成長していくのか、今後のご活躍を見守っていきたいです。
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